こだわりの商品を作る物語

お茶の千代乃園

大分と熊本の県境、八女市矢部村。
標高600mの雪も積もる山間部で作られるお茶があります。

八女茶や玉露生産で有名な黒木町を抜け、さらに南東へ50分ほど車を走らせると辿り着く矢部村。
その山間部でおじいさんの代から家族でお茶を作っている「お茶の千代乃園」の原島政司さん・江里さんご夫婦。

原島 政司さん:
「この前、東京に行った時にスカイツリーに登ったんですよ。
 うちはここより高いんだなぁ〜と思って(笑)」

標高600~650mにある千代乃園さんの茶畑には、冬、20cmほど雪が積もることもあります。
合わせて10数箇所ある畑の中には、斜面が急すぎて刈り取り機が入らない場所も。
厳しい寒さの中では害虫も少ないので農薬の使用を抑えて健康なお茶の木を育てることもできます。

政司さん:
「うちの新茶は一般の新茶の時期より少し出荷が遅くなります。」

厳しい寒さの中で育つお茶の葉はゆっくりと甘味と旨味を蓄える分、成長も平地に比べて遅いそうです。

江里さん:
「山のお茶は新茶の時期より本当は秋の初め頃に出るモノが、味わいが深く美味しくなるんです。」

お茶の千代乃園
「杉山の茶畑」と呼ばれる畑。上の方は機械が入らないため手摘みになります。

江里さんは平地の八女郡広川町のご出身。
初めて矢部村で冬を迎えた時は雪に大はしゃぎしたそうです。

「雪がすごく積もるのでハシャいでたら『毎年降るから…』って(笑)
ここの雪は溶けないんです。
去年かな…?春が来るまで雪が溶けなかったんですよ!」

厳しい冬を乗越えて春が来ると一気にお茶が芽吹きます。
独特の香りとまろやかさが売りの千代乃園さんの「雪ふる山のおそぶき茶」は、一度味わうと続けて購入されるリピーターのお客さまが多いそうです。

「直販をしてお客さまの声が直接聞けるのは励みになります。
イベントに出た時、とあるお客さまが『今まで煎茶を美味しいと思わなかったけど、初めて美味しいと思った』と言ってくださって。
その方は、イベント後もご連絡くださり購入してくださって…
すごく嬉しかったですね。」

お茶の千代乃園

お茶を作っているだけではなく、「お茶がある生活」の提案もお客さまにしている原島さん夫婦。
政司さんは日本茶インストラクターの資格を持っているほか、今は煎茶道の先生に習っているそうです。

「お茶は茶葉、淹れる水、そして淹れる人によっても味が違うと思います。」

「うちのお客さまはご年配の方が多かったんですよ。
でも、イベントなどに出ると若い方でお茶に興味を持ってくれてる人は確実にいるな、と感じます。」

「この前、うちに遊びに来た横浜の女性は『お茶は好きだけど茶器を持ってない』って言ってました。
割と『いい茶器がない。どんな茶器がいいのかわからない』という声も聞きますね。」

「茶器も一緒に紹介した方が良いのかな‥と思って、これを作ったんですよ。」

お茶の千代乃園

ふだん見慣れている急須の形より浅く一回りほど小さい急須。

有田焼急須

政司さん:
「和風にもモダンなお部屋にも合うように白にしたんです。
真っ白ではなく、波佐見焼なんですが…その白磁の色を生かした青みがかった白にして。
浅くしたのは、茶葉が良く見えるように。
丸くて深いと暗くて茶葉がよくみえないでしょ?あと掃除もしにくい。」

江里さん:
「丸い方が熱を逃がさない構造になっているので、よくお茶を淹れる方にはそちらの方が良いのですが、初心者の方は蒸らさず熱めのお湯でさっと飲まれる方も多いので、熱を逃す浅さにしたんです。
注ぎ口も垂れにくいカタチになってるんですよ。
お茶を楽しみたいな…と今から茶器を選ぶ初心者の方に使いやすいようになってます。」

有田焼急須

「お茶はもともと男の人が淹れて客人をもてなしていたんですよ。
こう(急須に)手をそえて淹れると女性っぽい仕草ですが、この急須のサイズなら片手に収まるから男らしいお茶の淹れ方ができます(笑)」

お茶の千代乃園

決められてるのがイヤだった。

千代乃園さんの茶畑は農薬を極力撒かないように、発酵有機肥料を手作りしてお茶を育てています。

「農薬は真夏の虫が一番多く発生する時期に1回だけ撒きます。
摘みとるまでの期間が長いので、お茶にした時にはほとんど残っていません。
だから、残留農薬の基準が厳しいEUにも私たちのお茶は出せているんです。」

「お祖父さんが始めた頃から減農薬だったんですか?」

「私からですね。父の代までは、農協が決めた回数をきちんと撒いてました。」

「農薬を減らそうと思ったきっかけがあったんでしょうか?」

「決められたことをするのがイヤだったんです(笑)
実際、標高が高いので害虫が少なく、そんなに農薬を撒く必要がないんですよ。
今年から『オーガニック』って言えるようにしてみようと思ってます。
3年かかるので、(言えるのは)早くても3年後ですけどね。」

お茶の千代乃園

政司さんは静岡にお茶の修行に行き、そのまま静岡で住み込みで働いていました。

「まだもう少し外で修業したかったんですけど、呼び戻されて(笑)
父が出したお茶が品評会で1等に選ばれて。ずっと出してたんですけど、ようやく。
その時のえらい喜んでる顔を見て、ここでやろうと決めました。」

全国でも標高600m以上の高さで茶葉を育てている所はほとんどないそうです。
険しい場所で苦労も多く、静岡の修行時代とは勝手が違うように思えます。
しかも農薬を極力使わず、健康なお茶の木を育てている原島さん。

「(勝手は)違いますね。でも矢部村は土が良いんです。
なかなか頂けない天皇賞を八女の農産物はいくつももらっている。
そんな恵まれた土壌なんです。」

農林水産大臣賞をお父さんの代から通算4回とっている千代乃園さんのお茶。
それは恵まれた山の土壌を生かしたヒトの労力と、丁寧な仕事が生みだしているのです。


お茶の千代乃園
福岡県八女市矢部村北矢部1743(MAPあり)
TEL 0943-47-2078
FAX 0943-47-2131

公式 website http://chiyonoen.jp

※お店ではありません。
訪れる際は必ずご連絡ください。

 


お茶の千代乃園の品を全国へお届けいたします

About the author

チクチック

地域・地方の魅力は、そこで暮らし営む「ひと」の魅力だと思います。
その魅力は日本中、世界中にありますが、まずは自分たちが暮らす福岡県ちくご地方に目を向けました。
そして、市町村単位ではなく、自分たちが日常的に気軽に行動できる、例えば車で1~2時間で移動出来るような、もっと感覚的に大きなエリア。
「自分の地元」と言えるようなエリアを自らの足を使って取材する形で発信しています。

地域の読みものとしてのWEBマガジン「チクチック」を担当している
オガワが取材に行ったり、イベントで見たり、お店で聞いたことを記事として書き留めてます。