こだわりの商品を作る物語

ねずみとラ – 谷鳳窯 –

「ねずみとラ」として陶磁器を作る宮崎さん夫婦の物語。

お茶の産地として、温泉地として有名な佐賀県嬉野市。
温泉街の少し離れた山間にいくつも窯元が立ち並ぶ集落があります。
備前吉田焼と呼ばれる陶磁器の生産地に、宮崎 泰裕さんが生まれ育ち、今もお父さんと一緒に働いている「谷鳳窯(たにほうがま)」はあります。近くには有田焼や波佐見焼の産地も近い嬉野市。
備前吉田焼に馴染みがなかった私たちは、まずはじめに「嬉野焼とは呼ばないんですね?」と宮崎さんに尋ねました。

宮崎 泰裕さん:
「嬉野の中にも結構ちょこちょこ(窯は)あるんですけど、密集具合では吉田の方がありますね。
父が、量産型の窯という感じではなく、作家として(器を)作っていたのもあって、うちは吉田焼の組合には入ってないんですが‥
『吉田焼ってどういうのがあります?』って聞かれたら『水玉』って答えてます(笑)」


一躍有名になったこのドット柄の器は備前吉田焼の窯元が生みだしました。


父・祐輔さんの作品。細かい絵付けが施されています。

おじいちゃんとお父さんが器を焼いてる様子を見て育った泰裕さん。
でも、焼物を作る気は全然なかったそうです。

「いわゆる就職氷河期で(笑)
面白くなかったら辞めよう。くらいのスタンスでこの世界に入りました。」

結果、10何年。自分の焼物だけじゃなく、いろんな焼物の話も詳しく教えてくださるほど焼物の世界にどっぷりの泰裕さん。

「自分の作ったモノが売れて…なんか、必要としてもらえてると感じて。
大変なことの方ばかりですけど。
窯1つ分全部、焼いたものが割れてたことがある時は『やめろってことかな…』と、落ち込むけど(笑)
たまに、ご褒美みたいな嬉しいことが年に何回かある。
焼物が単純に奥が深くて… 深すぎる部分もあるんですけど、面白い!」

ねずみとラ

谷鳳窯としてお父さんと作品を作る傍ら、妻の慧子(さとこ)さんと、『ねずみとラ』という作家として焼物を作っています。
この、シンプルだけど個性的なユニット名の由来を伺ったところ…

慧子さん:
「主人 泰裕が子年。私が寅年なのが元です。
しかし、ねずみとラ の”ラ”だけをカタカナにしたのは、音階のラの意味を含めています。
諸説あるそうですが、ラの音は音階の始まりで、ラを基準に音が広がっているそうです。
また、赤ちゃんの産声もラの音にに近かいそうです。
人は食べることにより、活力となり始まる。
その食のシーンにそっと彩りを添えるような器作りが、私たちの活動の最初の思いにあったので、
干支の始まりのねずみ、音の命の始まりのラ。
無限に広がるラの様が良く思いを込め”ねずみとラ”とつけております!」

素敵なお名前ですよね。
泰裕さんの説によると、大気圏を飛び出すとラーと音がきこえるそうです。(余談)

泰裕さん:
「僕個人(谷鳳窯)では、結構絵を描いて、細々と手の入る仕事をするので、『ねずみとラ』では釉薬(ゆうやく)を掛けた時にちゃんと良いものになるようなモノを心がけてはいます。」


こちらが「谷鳳窯」の泰裕さんの作品。


こちらが「ねずみとラ」の作品。


「ねずみとラ」では、「ロクロ型打ち」という技法で、ロクロでひいたものを型に打ち込んで模様とか型をつけています。
ロクロでひいて、型打ちして、削るという大変な手間がかかっています。

「カタチとかは僕が考えて、柄は…これは柄が先にあったんですね。
『この柄はどの大きさがいいか?』ってなった時に、僕よりも妻の方が
時代の流れと言うか、料理のサイズ感とかは知ってるので妻に決めてもらってます。
このシリーズは、2種類の柄で、大きさは3種類で、色は3色で。」


器は素焼きをしてから、釉薬をかけます。
そうすると、丈夫なものが出来るそうです。


釉薬のテストピース。
石灰ではなく、灰をベースにした釉薬を使います。

「景色が出るというか…
顔料で出す色や、金属で出す色やいろいろありますが、基礎釉(ベースの白の色)が石灰だと綺麗に安定して出ます。
灰をベースにすると、流れであったりムラが出やすい。
彫りもちゃんと見えるカタチにするなら釉薬を柔らかくして。
というのが始まりで、そういうのを1個ずつやっていったら、このカタチが誕生した。」

色のムラをわざと作ることで、模様が浮き出て器の表情が1つ1つ微妙に変わる「ねずみとラ」の器。
でも、そのムラを表現するための技術は難しいのです。

「色はいいんだけどヒビが入りやすいとか、作り始めの頃は結構あって。
安定しない所…ムラが出る所ってヒビが入りやすいんですよ。
釉薬とか焼きの温度とかをちょこちょこ調整しています。
でも、それが色を生みだすので、怠ってはいけない所だから。」

量産型の窯とは違う、小さい窯元だからこそ見せれる器を作りたい。と話す泰裕さん。

「色であったり質感であったり。こういう個体差を楽しんでもらいたいし、気づいてもらえたら嬉しいかな。」

「ぼくらもやっぱり売れたいですけどね(笑)。
売れたいんですけど…売れるようなものを作るのは大変なんだけど、今の時代の流行だけを目指すのは…やってる意味あるのかなぁ…?と。
ただ、自分で『良い!』って思うだけなら、趣味でやれば、ということになるんで。
どんどん入り込んでしまわず、いいバランスで。
使いやすいサイズや色など考えて、自分たちの信じれるモノを永く作り続けていきたい。」


【関連記事】
・ねずみとラ 展示販売会



【谷鳳窯ギャラリー】
〒843-0303
佐賀県嬉野市嬉野町吉田丁3861-1
0954-43-9850
OPEN 10:00-17:00
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Instagram @nezumi.too_ra

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チクチック

地域・地方の魅力は、そこで暮らし営む「ひと」の魅力だと思います。
その魅力は日本中、世界中にありますが、まずは自分たちが暮らす福岡県ちくご地方に目を向けました。
そして、市町村単位ではなく、自分たちが日常的に気軽に行動できる、例えば車で1~2時間で移動出来るような、もっと感覚的に大きなエリア。
「自分の地元」と言えるようなエリアを自らの足を使って取材する形で発信しています。

地域の読みものとしてのWEBマガジン「チクチック」を担当している
オガワが取材に行ったり、イベントで見たり、お店で聞いたことを記事として書き留めてます。