食品衛生、流通の仕事に10年間携わっていた褚 蘭宇(チョランウ)さん。
食の「安心・安全」という問題に悩んでいた時、合鴨農法と出会い、農業をはじめました。
福岡県三潴郡大木町、道の駅「おおき」の隣にある宇っちゃん農園。
お米や数多くの野菜、卵、肉などが循環型農業で作られています。
循環型農業とは、「持続可能な農業 (Sustainable agriculture)」の考え方の1つで、農薬などで土や水を汚さず、畜産や農業、家庭から出る廃棄物を肥料に循環利用する農業のことです。
自然環境に良いということは、その一部である人間にももちろん良いということになるので、最近では「健康に良い有機農業」というカタチでも広まっています。
褚さん:
「卵や肉のために飼うのではなく、肥料にする糞のためにニワトリを飼っています。
卵や肉は副産物。
(量産の)効率を考えないから、ニワトリもストレスがなくて健康。
午前中は卵を産むから小屋の中にいるけど、午後は放し飼いにする。
ニワトリは鳥だから、夜になるとちゃんと巣に帰って来るよ。」
宇っちゃん農園の合鴨やニワトリは、褚さんが作ったエサを食べています。
農園の草や野菜クズ、大木町の麦や米クズ、そして圧搾絞りの油カス。
圧搾絞りは、どうしても油をカスに残してしまうため効率が悪くなります。
昔ながらの圧搾絞りで油を造っている会社は数が少なく、うきは市や鹿児島から仕入れているそうです。
その会社が油を圧搾絞りで造らなくなれば、宇っちゃん農園でも作物や家畜が育ちません。
「有機農業が『むつかしい』って言うけど、むつかしくないんですよ。
みんなですれば出来るんですよ。
1人しかしてないから!(難しくなる)
私まだ3年目ですが、出来ています。
周りがしてないのに独りでするから、むつかしい。」
「ニワトリの話だけで1日かかります(笑)」
褚さんは休む間もなく早口で喋ります。
ニワトリが健康だと良い肥料になる糞をします。
その糞と農作物のくずなどを混ぜた有機物の肥料を発酵させてから鳥たちに与えます。
エサだけでも、ものすごく手間がかかっているのです。
そして、鳥たちは雑草や虫等も食べて駆除してくれるのです。
循環型農業について研究熱心な褚さんは言いました。
「作ったものを自分で食べて、自分の体で実験している。
これはね、リアルサバイバルゲーム!」
3年前までは福岡市でサラリーマンをしていた褚さん。
「”農”という字もわかってない素人だった」 と言う褚さんが、なぜここまで熱心に循環型農業を実践しているのでしょうか?
元々は上海で建築を専攻してた褚さんが、福岡に留学した時は超就職氷河期。
就職するために商学部を専攻し、福岡で就職したそうです。
「食品流通の仕事をしていました。衛生や卸、貿易、そういう仕事をしてました。
きっかけはね、中国の餃子事件。
中国でも日本でもどこでも食品の流通には色んな会社が間に入っています。
何が安心・安全かは作った人から直接買わないと、結局わからないんですよ。」
そんな「食の安心・安全」を考え、1、2年悩んでいた褚さんはインターネットで合鴨農法に出会います。
合鴨農法のパイオニアである福岡の古野さんの所へ見学に行った褚さん。
「ハっ!となりました。
1週間見学して、すぐ会社に辞表書きました(笑)」
「ゴミ0のまち」大木町
実は、宇っちゃん農園がある大木町は循環のまちづくりが日本中でトップクラスに進んでいる町です。
生ゴミなどの再資源化をすすめ、それらを発酵させて生まれたバイオガスをエネルギー利用したり、盛んな農業の肥料として利用しています。
道の駅おおきのすぐ隣に再資源化の施設が建ち、匂いが気にならず肥料化に成功していることを実感します。
もちろん、町の住民の皆さんの理解と協力がなければ出来ないことです。
ゴミ出し1つにしても、とても分別が細かく大変だそうですが、それをみんなが守るから継続できているのです。
宇っちゃんを紹介してくれた同じ大木町のニコパンの美香さんが教えてくれました。
「「大木町はアピール下手だから、全然知られてないけどね(笑)
でも、東京とかからも(循環型環境の)視察に来るよ。」
褚さんの目指す農業は「出来るだけ自然に近いかたちで」。
尚かつ、美味しい野菜や卵や米をつくる。
それには手間と知識がとても必要です。そして、色んな人の協力も。
褚さんのように安心・安全な食べものを求めている人に食べてもらえるように。
褚さんの「リアル・サバイバルゲーム(笑)」は日々、研究を重ねられて、より安心で安全な農業へと突き進んでいきます。
「大体野菜は50種類ぐらい作ってます。
水が多く必要な野菜は長雨でも育つし、雨が少なかったら乾燥に強い野菜が育つ。
1種類だと天候に左右されてしまうけど、宇っちゃん農園はいつもお客さんに作物が届けられるようになってます!」
中まで水水しく鮮やかな色の堀たての野菜。

TEL 0943-75-3303
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