久留米に永く住んでいるご家庭なら「どこの家にでも1つはある」というほど、地元に根付いている工芸品である一方で、現在、籃胎漆器の多くが海外からの輸入品になり、全行程を日本で生産している籃胎漆器は希少になっている現実と直面しています。

親しみある表情で、どこか人をホッとさせてくれる伝統工芸品。
百年の歴史を物語る風格を持ちながら、人の暮らしの中で活きる素朴さを持ちます。
匠たちの熟練した技による堅固なつくりは、「日用品として使われてこそ活かされる」と井上さんは考えています。
明治時代に創業した「井上らんたい漆器」では現在も地元の真竹を使い、この道30年~60年の職人たちが昔と変らず久留米市で作っています。
昭和天皇のご即位式(御大典)に使われた漆器の屏風を製作した歴史もあるのです。
【竹ヒゴを作る】
材料は、地元ちくご地域の久留米市・耳納連山の真竹です。(※お箸のみ福岡県八女の竹を使っています)
水分を多く含んでいる竹は甘く、虫がつきやすいため、一年のうち11月~12月に切り取った真竹を選んで使用しています。

竹の節を使うと竹籠に凹凸が出来るので、節を切って保管します。
節と節の長さは24cmから50cmと竹によってバラつきがあるので、長さごとに分類して置いています。

使いたい竹ヒゴの大きさに応じた幅と長さに竹を割り、竹ヒゴを取ります。
何度も漆(油性漆)を塗り固めて作る藍胎漆器では、一般の竹細工より薄い、皮を除いた中の柔らかい部分を使い竹ヒゴを使います。
手作業で限界の細さまで竹を割った後、専用の機械を使って紙のような薄さまで竹を割きます。
その機械は、作った技術者たちが全員引退されたので、今はメーカーに持って行っても、もう修理が出来ないのです。
「機械の調子を見ながら、作業しとるんですよ」
井上さんは歯車をカナヅチでトントン叩いたりとメンテナンスしながら、竹を通します。

「さすがに機械でやる薄さまで、手作業でなかなか出来んですからね。
この機械が壊れてしまったら、どうしていいかわからんですよ(笑)」

竹ヒゴは長さごとに揃えられ、束ねられ、天井にズラーっと並べられていきます。
【竹ヒゴを編む】
作った竹ヒゴで竹籠を編んでいきます。
作る物の大きさと形に合わせて、竹ヒゴと数パターンある編み方を選んで編みます。


あじろ編み

「あじろ編み」より数段手間がかかる亀甲編み
削り出す部分や色によって沢山パターンがありますが、基本はこの2つの編み方です。

「亀甲」の編みパターン。あえて絶妙な隙間を空けて編みあげます。
編みあがった竹細工を固め、余分な箇所を切りながら形を整えて表面を接着します。
同様に、裏面も接着します。
籠そのものを固めたり、貼り合わせたり、場合により木に貼り付けて成形します。
目の粗い籠の隙間と縁には、木屎(こくそ)を使い滑らかに仕上げ下地を作ります。

【下地の仕上げ】
錆(さび)をブラシですり込むようにし、下地を仕上げます。
馬の尾毛を使い自前で作ったブラシを使っています。


左が下地を塗る前。右が塗った後、乾かした状態。
微妙な隙間が全て埋まっています。
【塗り】
油性漆塗料、またはウレタン塗料を8回ほど塗り重ねていきます。
竹ひご、編んだ籠、下地を塗った後、それらと同様に中塗りをした後も風で乾かします。
「ここの風が乾かすから。籃胎漆器は、ここの自然が作りあげとるんですよ(笑)」
塗りは、油性漆・ポリウレタン・天然漆等を使用しております。
何度も塗り重ねることで強度が増し、酸やアルカリにも強い漆器が生まれます。
緑や青系の綺麗な発色は、本来漆塗りでは出ない色味です。
食品衛生上に適しているウレタン塗装が一般的となり、色んな色の籃胎漆器が出来るようになりました。


【研ぎ出し】
塗り上げた品を研ぎ出して、下に塗っている色と籠の模様を研ぎ出します。
どんな色合いと仕上がりにしたいのかによって、塗りも研ぎ出しの方法も変えていきます。
研ぎ出しが終わった後は、淡透漆を塗るか摺り漆をして、完成です。

[mks_col]
[mks_one_half][/mks_one_half]
[mks_one_half]〒830-0045
福岡県久留米市小頭町6-23(MAPあり)
TEL 0942-39-5454
開店時間 10:00~18:00(不定休)
[/mks_one_half]
[/mks_col]